在宅介護で利用できる公的サービスは?

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そのような経緯で私たちと母の介護生活が幕を開けました。結論から申し上げますと、行政が提供している公的サービスを利用せずに私たちが母の介護を行うことはほぼ不可能だったと思います。私たちが利用したのは、次の4つのサービスです。

  1. 在宅診療
  2. 訪問看護
  3. 訪問入浴
  4. 介護ベッドのレンタル
  5. おむつサービス

このうち1と2は医療保険で、3と4は介護保険で利用しました。5のおむつサービスは行政のサービスです(お住まいの地域の行政によって内容は異なるかもしれません)。そのほか「在宅がん医療総合診療」という制度も利用することができました。これは、訪問診療をお願いしていた病院からの説明によりますと、このような制度です。

「『定期往診・緊急往診・訪問看護・処置・注射・検査などの料金が包括される』というもので、通常の出来高での料金と異なり、1週間ごとに決まった料金が発生します。在宅で療養を行っている、通院が困難な末期の悪性腫瘍患者様が対象になります」

この「在宅がん医療総合診療」は、訪問回数に関して縛りがあります。それは「医師による往診と看護師による訪問看護を組み合わせて週に4回以上行う必要がある」ということです。でも、これには利用する私たち家族にとっては請求が一元化されるというメリットがありました。

通常は、訪問診療を行っている病院と訪問看護を行っている訪問看護ステーションの2箇所からそれぞれ請求が来ます。ですが、この「在宅がん医療総合診療」を利用した場合には、請求は病院からのみ。訪問看護ステーションへの支払いは病院のほうで行ってくれます。

我が家の場合、医療の支払いは上限が決まっていたので、この在宅医療でかかる訪問診療+訪問看護の料金は自己負担額で月に2万円ほどでした。

もっとも、訪問看護ステーションのほうは土日や夜間に訪問してもらった場合には、その分の料金が別枠で発生し、その部分に関しては直接訪問看護ステーションから請求が来ました。

訪問入浴は、母が在宅でがんと闘っていた間の唯一の楽しみと言っても良いかもしれません。週に一度、自宅に来てくださって利用していたのですが、母は本当にうれしそうでした。要介護5ともなりますと、さすがに私たち家族が母を風呂に入れることは不可能。訪問入浴サービスは本当に助かりました。ただ、お風呂のあとは体力がかなり奪われるからなのか当日と翌日は食事もせずにひたすら寝続けていました。このまま逝ってしまうんじゃないかと思うくらいに・・・。

また、介護ベッドはこれなくして介護は不可能と思うくらい重要です。母がまだ歩けるうちは介護保険を使って4点杖もレンタルしていたのですが、要介護5になってからは寝たきりですので、杖も不要になりました。介護保険で利用していたのは、介護ベッドとベッド脇に置く昇降式サイドテーブルと前述の訪問入浴のみでした。