緩和ケア病院が見つからない!そこで選んだのは・・・

 そんな状況ですから、母は当然、「退院したい」と言い出しました。年末真っ最中です。もっとも病院では年末年始に自宅で過ごしたいという患者さんが多いという話を聞いていたので、母の希望もすんなりと通り、とりあえず年末最終日である12月29日に退院してもらうことにしました。年明け1月5日の再入院の予約をして。かかりつけの病院は小さい病院ながらドクターが非常に親切で人間味のある先生でしたので信頼していたのですが、「緩和ケア」という観点で考えると、母にとって十分な世話がなされていたかというとそれは「否」と言わざるを得ません。それでやむなく私たちは、緩和ケアができる病院を再度探してみることにしました。

かかりつけ医の病院に最初に入院した2020年11月に、母はその病院の看護師さんから「『勤医協中央病院』でも緩和ケアをやってますよ」という情報を入手しており、そのことを私たちに話していました。それで、私は母が退院する数日前に勤医協中央病院に電話してみました。ところが外来新規は2,3ヶ月待ちとのことでした。それはつまり、もし母が退院後に元の病院に戻らないことにした場合、外来通院するまでの2,3ヶ月間は何かがあっても対応してもらえる病院がないという、いわば「がん難民」になってしまうことを意味しています。それはなんとしても避けたいのでそこは候補から外しました。そうなると、外来や入院で緩和ケアをしている病院は私たちから通える範囲の場所にはないということになります。ですが、そこからさらに調べたところ「在宅医療」というものがあることがわかりました。

 これまでのかかりつけ医も往診には対応してくれているので、その病院のドクターに在宅医療をお願いすることは可能と言えば可能ではあったのですが、その病院はなにせドクターが一人。土日祝日と夜間に関しては対応してもらえません。年末に退院して年始までの数日間は病状の急変等があっても対応してもらえないというのも不安でしたので、年末年始を含む土日祝日も対応していただける医療機関を探してみることにしました。

 調べたところ、家からさほど遠くないところに総合病院で在宅医療を行っている病院があることがわかりました。それで私は早速連絡してみました。病院ホームページには病院から半径2km圏内が訪問診療可能と記載がありましたが、家から病院までは直線距離で2.8km。範囲外です。それでも電話でお話ししたところ、なんとか訪問していただけることになり、しかも母が退院する当日からすぐにサービス開始手続きをしていただけることなりました。なんとも頼もしい限り。その配慮は本当に心強かったことを覚えています。

  また、訪問診療に加えて訪問看護のほうも、ケアマネージャーがすぐに手配してくださったおかげで、こちらも年末年始の休日でも対応してくれる24時間対応可能なところが無事に見つかりました。自宅での介護がスタートした2020年12月29日。世の中では依然としてコロナウイルス感染症が猛威を振るっていました。そんな中、私たち夫婦と母のコロナ禍での100日間に及ぶ介護生活が幕を開けたのです。