相続手続きで銀行口座の名義変更に必要な書類は?

銀行口座の名義変更は相続手続きの中でも重要なステップです。

でも、どのような書類が必要で、どのように手続きを進めるべきか分からない方も多いことでしょう。この記事では、相続手続きにおける銀行口座の名義変更に必要な書類や、その取得方法、手続きの流れについて詳しく解説します。

銀行ごとの注意点も含めて、分かりやすく説明しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

1. 銀行口座名義変更の基本的な流れとは?

相続手続きは、故人が残した財産を相続人が引き継ぐための一連の手続きです。この手続きの中には、故人の銀行口座の名義変更も含まれます。ここでは、銀行口座の名義変更の基本的な流れについて、初心者にも分かりやすく説明します。

1. 相続の開始

相続手続きは、故人が亡くなった時点で開始されます。まずは死亡届を提出し、故人の死亡を公的に記録します。

この段階で、相続人が誰になるのかを確認する必要があります。相続人は、法律で定められた順序に従って決まります。

通常は配偶者や子供が優先されますが、場合によっては親や兄弟姉妹が相続人になることもあります。

2. 遺言書の確認

次に、故人が遺言書を残しているかどうかを確認します。

遺言書がある場合、その内容に従って財産の分配が行われます。

遺言書がない場合は、法律で定められた相続分に基づいて財産が分配されます。遺言書が見つからない場合でも、後日発見される可能性があるため、慎重に確認することが重要です。

3. 相続人の確定と遺産分割協議

相続人が確定したら、次に遺産分割協議を行います。これは、相続人全員が集まって遺産をどのように分けるかを話し合うプロセスです。「遺産分割協議書」という書面に、全員の合意内容を記載し、全員が署名・押印することで正式に決定します。

合意が得られない場合は、家庭裁判所で調停や審判を行うこともあります。

4. 必要書類の準備

銀行口座の名義変更を行うためには、以下のような書類が必要です:

  • 故人の死亡届受理証明書または死亡診断書
  • 故人の戸籍謄本(A)
  • 相続人全員の戸籍謄本(B)
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • (A)(B)の代わりに「法定相続情報一覧図」で手続きすることも可能。

これらの書類を揃えるためには、役所や法務局、銀行など複数の機関を訪れる必要があります。当事務所では銀行関連の手続きに必要な書類や戸籍等の収集を代行しており、忙しい相続人様をサポートしています。

行政書士行政書士

当事務所では法定相続情報証明制度の申出や法定相続情報一覧図の取得も行なっています。

5. 銀行での手続き

必要書類が揃ったら、いよいよ銀行での手続きを行います。

まず、銀行の窓口に出向き、名義変更を申し出ますが、最近はそれぞれの銀行に「相続センター」を設置している銀行もあるため、その銀行に電話やウェブサイトから確認してみることをおすすめしています。

銀行では、書類の内容を確認し、必要に応じて追加の情報や書類を求められることもあります。手続きが完了するまでに、数週間から数ヶ月かかる場合があります。

6. 名義変更(または解約)の完了

全ての手続きが完了すると、銀行口座の名義が正式に相続人のものになるか、もしくは解約されます。この段階で、相続人は口座の残高を引き出したり、口座を閉鎖したりすることができるようになります。

相続手続きは、多くの書類や手続きを必要とするため、初めて行う人にとっては複雑で時間がかかる作業です。

2. 相続手続きに必要な書類リスト

相続手続きは、故人が亡くなった後、その財産を法定相続人が引き継ぐために行う一連の手続きです。特に銀行口座の名義変更には、さまざまな書類が必要です。ここでは、相続手続きに必要な書類を分かりやすく説明します。

1. 死亡届受理証明書または死亡診断書

相続手続きの最初のステップは、故人が亡くなったことを証明する書類の取得です。一般的には、医師が発行する死亡診断書か、役所で取得できる死亡届受理証明書が必要です。この書類は、故人の死亡を公式に確認するために使われます。

2. 故人の戸籍謄本

故人の戸籍謄本(こせきとうほん)は、故人の身分関係を証明する重要な書類です。

この戸籍謄本には、故人が生まれた時から亡くなるまでのすべての戸籍情報が記載されています。これを取得するためには、故人の本籍地の役所に依頼する必要があります。

3. 相続人全員の戸籍謄本

相続人全員の戸籍謄本も必要です。これによって、誰が法定相続人であるかを確認します。相続人が複数いる場合、それぞれの戸籍謄本を揃える必要があります。これにより、銀行や他の機関が相続人を正確に把握できるようになります。

2017年(平成29年)5月に「法定相続情報証明制度」ができてからは、「法定相続情報一覧図」で手続きができる金融機関がほとんどです。

4. 相続人全員の住民票

相続人全員の住民票も必要です。住民票には、相続人の現住所が記載されており、銀行などの機関が連絡を取る際に使用されます。住民票は市区町村の役所で取得できます。

こちらも「法定相続情報一覧図」に相続人の住所が載っていれば住民票が不要となるケースが多いです。

5. 遺産分割協議書

遺産分割協議書(いさんぶんかつきょうぎしょ)は、相続人全員が合意した遺産の分配方法を記載した書類です。相続人が複数いる場合、遺産をどのように分けるかを話し合い、合意内容を協議書にまとめます。この協議書には、全ての相続人の署名と実印が必要です。

6. 相続人全員の印鑑証明書

印鑑証明書は、相続人全員が実印を登録していることを証明する書類です。

遺産分割協議書に署名・押印する際に、この印鑑証明書が必要になります。印鑑証明書は市区町村の役所で取得できます。

7. 遺言書(ある場合)

もし故人が遺言書を残していた場合、それも必要です。

遺言書には、故人がどのように遺産を分配したいかが書かれています。遺言書がある場合、その内容に従って相続手続きを進めます。ただし、遺言書が公正証書遺言でない場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要です。

8. 銀行の所定の書類

銀行ごとに所定の書類が存在します。例えば、銀行が提供する相続手続き用の申請書や、銀行口座の名義変更に関する書類があります。これらは銀行の窓口や公式ウェブサイトで入手するか、銀行の「相続センター」から郵送してもらえます。

9. その他の関連書類

場合によっては、追加の書類が必要になることもあります。例えば、不動産が含まれる場合は、不動産登記簿謄本が必要です。また、相続税申告を行う場合は、相続税申告書や財産評価書も必要です。

書類を揃える手順

  1. 死亡届受理証明書または死亡診断書を取得する:最初に医師や役所で死亡証明書を取得します。
  2. 故人の戸籍謄本を取得する:故人の本籍地の役所に依頼して戸籍謄本を入手します。
  3. 相続人の戸籍謄本と住民票を取得する:相続人全員の戸籍謄本と住民票をそれぞれの役所で取得します。
  4. 遺産分割協議書を作成する:相続人全員で話し合い、遺産分割協議書を作成します。全員の署名と実印が必要です。
  5. 印鑑証明書を取得する:相続人全員が役所で印鑑証明書を取得します。
  6. 銀行に提出する:揃えた書類を持って銀行に出向き、名義変更の手続きを行います。

相続手続きは煩雑で時間がかかることが多いため、事前に必要な書類をしっかりと把握し、計画的に進めることが大切です。お忙しい方はぜひ当事務所をご活用ください。

3. 戸籍謄本と住民票:取得方法と注意点

相続手続きの中で重要な役割を果たすのが、戸籍謄本と住民票です。これらの書類は、故人の財産を適切に相続するために必要不可欠なものです。ここでは、相続手続きにおける戸籍謄本と住民票の取得方法および注意点について、初心者にも分かりやすく説明します。

戸籍謄本の取得方法

1. 取得場所

戸籍謄本は、故人の本籍地の市区町村役場で取得できます。故人の本籍地は、故人の戸籍謄本に記載されていますので、事前に確認しておくことが重要です。

2. 必要な情報

戸籍謄本を取得するためには、以下の情報が必要です:

  • 故人の本籍地の住所
  • 故人の氏名
  • 故人の生年月日

これらの情報をもとに、役場の窓口で申請します。郵送で申請することも可能ですが、2024年3月1日施行の改正戸籍法により従来は本籍地でしか取得できなかった戸籍謄本や抄本が、全国どこの役所でも取得できるようになりました(ただし、行政書士やその他士業が「職務上請求書」で取得する場合は本籍地の役所での手続きが必要)。

3. 手数料

戸籍謄本の発行には、手数料がかかります。手数料は市区町村によって異なりますが、一般的には1通あたり300円から500円程度です。現金での支払いが基本ですが、郵送で申請する場合は定額小為替を利用することができます。

4. 郵送での取得

遠方に住んでいる場合など、直接役場に行けない場合は、郵送で戸籍謄本を取得することもできます。その際には、以下のものを送付します:

  • 申請書(市区町村のウェブサイトからダウンロード可能)
  • 手数料(定額小為替)
  • 返信用封筒(切手を貼り、自分の住所を書いたもの)
  • 自分の身分証明書のコピー(運転免許証やマイナンバーカードなど)

住民票の取得方法

1. 取得場所

住民票は、現在の住所地の市区町村役場で取得できます。相続人全員の住民票が必要ですので、各相続人がそれぞれの住民票を取得します。

2. 必要な情報

住民票を取得するためには、以下の情報が必要です:

  • 申請者の氏名
  • 申請者の住所
  • 申請者の生年月日

役場の窓口で申請します。

3. 手数料

住民票の発行にも手数料がかかります。こちらも市区町村によって異なりますが、一般的には1通あたり300円程度です。

4. 郵送での取得

住民票も郵送で取得することができます。その際には、以下のものを送付します:

  • 申請書(市区町村のウェブサイトからダウンロード可能)
  • 手数料(定額小為替)
  • 返信用封筒(切手を貼り、自分の住所を書いたもの)
  • 自分の身分証明書のコピー

注意点

1. 本籍地の確認

故人の戸籍謄本を取得する際、本籍地を正確に把握しておくことが重要です。本籍地は、通常、住民票や運転免許証に記載されていますが、引っ越しなどで変更されている場合もあります。最新の情報を確認しておきましょう。

2. 身分証明書の準備

戸籍謄本や住民票を取得する際には、身分証明書が必要です。運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書を事前に準備しておきましょう。

3. 早めの準備

相続手続きは期限がある場合も多いため、戸籍謄本や住民票の取得は早めに行うことが望ましいです。特に郵送での取得には時間がかかるため、余裕を持って手続きを進めましょう。

4. 遺言書の有無による手続きの違い

相続手続きでは、故人が残した遺産を相続人が受け継ぎます。このとき、遺言書の有無によって手続きが大きく異なります。遺言書がある場合とない場合の違いについて、初心者にもわかりやすく説明します。

1. 遺言書がある場合

遺言書がある場合、相続手続きはその内容に基づいて進められます。遺言書は、故人が自分の財産をどのように分配するかを記した重要な書類です。遺言書の有効性を確認するための手続きと、その後の相続手続きの流れについて説明します。

(1) 遺言書の検認

遺言書が見つかった場合、まず行うのが「検認」という手続きです。これは、家庭裁判所で遺言書の内容や形状を確認し、偽造や改ざんがないことを証明するための手続きです。検認が済むと、遺言書が正式に有効であることが確認されます。

検認の手続きは、以下の手順で行われます:

  • 家庭裁判所に遺言書を提出し、検認の申し立てを行います。
  • 家庭裁判所から検認期日が指定され、相続人全員に通知が送られます。
  • 検認期日に家庭裁判所に出向き、遺言書の内容が確認されます。

(2) 遺言書の内容に基づく相続手続き

検認が終わった遺言書の内容に基づいて、財産の分配が行われます。遺言書には、特定の相続人にどの財産をどのように分配するかが明記されているため、その指示に従って手続きを進めます。

具体的な手続きは以下の通りです:

  • 遺言書に従って各相続人が財産を受け取ります。
  • 銀行口座の名義変更や不動産の名義変更など、各財産の名義変更手続きを行います。
  • 必要な書類を揃え、各機関に提出して手続きを完了させます。

2. 遺言書がない場合

遺言書がない場合は、法律で定められた相続分に基づいて財産を分配します。この場合、相続人全員で話し合い、遺産分割協議を行います。

(1) 法定相続分に基づく相続

遺言書がない場合、相続人の間で財産をどのように分けるかを決める必要があります。法律では、相続人の関係性に基づいて「法定相続分」が定められています。例えば、配偶者と子供が相続人の場合、配偶者は全財産の半分、残りの半分を子供が均等に分けるというように決まっています。

(2) 遺産分割協議の実施

法定相続分に基づく分配が決まったら、相続人全員で「遺産分割協議」を行います。これは、相続人全員が集まり、具体的にどの財産を誰が受け取るかを話し合う場です。遺産分割協議の結果は、「遺産分割協議書」という書面にまとめられ、全員が署名・押印します。

遺産分割協議書には以下の内容が含まれます:

  • 各相続人がどの財産を受け取るか
  • 各相続人の署名と実印
  • 各相続人の印鑑証明書

(3) 名義変更手続き

遺産分割協議が完了したら、実際に財産の名義変更手続きを行います。銀行口座や不動産など、各財産の名義を新たに相続する人の名前に変更します。これには、以下の書類が必要です:

  • 故人の死亡届受理証明書または死亡診断書
  • 故人の戸籍謄本(A)
  • 相続人全員の戸籍謄本(B)
  • 相続人全員の住民票(C)
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書

※上記(A)(B)(C)は「法定相続情報一覧図」でも可能な場合もある。

遺言書の有無による手続きの違い

遺言書がある場合、相続手続きは比較的スムーズに進むことが多いです。遺言書の内容に従って財産を分配するため、相続人間での争いも少なくなります。一方、遺言書がない場合は、相続人全員で協議を行い、合意を得る必要があります。そのため、遺産分割協議が長引いたり、意見の対立が生じたりすることもあります。

相続手続きは、遺言書の有無によって大きく異なるため、事前に遺言書を作成しておくことが重要です。遺言書を作成することで、相続人がスムーズに財産を受け継ぐことができ、トラブルを防ぐことができます。

5. 銀行ごとの手続きの違いと注意点

相続手続きにおいて、銀行口座の名義変更は重要なステップの一つです。しかし、銀行ごとに手続きの流れや必要書類が異なる場合があります。ここでは、銀行ごとの手続きの違いや注意点について、相続手続きを初めて行う人にも分かりやすく説明します。

1. 銀行手続きの基本的な流れ

まず、どの銀行でも共通する基本的な手続きの流れを説明します。

  1. 死亡の通知:相続人は故人の死亡を銀行に通知します。通常、死亡診断書や死亡届受理証明書を提出します。
  2. 口座凍結:通知を受けた銀行は、故人の口座を凍結します。これにより、口座からの出金や振替ができなくなります。
  3. 必要書類の提出:相続人は銀行に対して、名義変更に必要な書類を提出します。
  4. 書類の確認:銀行が提出された書類を確認し、手続きを進めます。
  5. 名義変更:書類の確認が完了すると、口座の名義が相続人のものに変更されます。

2. 銀行ごとの手続きの違い

次に、銀行ごとに異なる手続きや必要書類の違いについて説明します。主要な違いは、必要な書類の種類や手続きの詳細にあります。

(1) 必要書類の違い

多くの銀行では、基本的に上記の書類が必要となりますが、銀行によっては追加の書類が必要になることがあります。

例えば、一部の銀行では「相続届出書」や「預貯金相続手続き申請書」を独自に用意しており、これらを提出する必要があります。

特にゆうちょ銀行では独自の委任状が準備されており、相続人がすべて自分で記入しなければならない、などの決まりがありますので要注意です。(画像クリックでダウンロードできます)

出典:ゆうちょ銀行

(2) 手続きの進め方

銀行によって手続きの進め方にも違いがあります。一部の銀行では、相続手続き専用の窓口を設けており、予約が必要な場合があります。また、手続きの進行状況や必要書類の提出状況をオンラインで確認できるサービスを提供している銀行もあります。

(3) 対応時間と期間

銀行ごとに、相続手続きの対応時間や完了までの期間も異なります。大手銀行では、手続きがスムーズに進むように専用のサポートチームが設けられていることが多く、比較的短期間で手続きが完了することがあります。一方、地方銀行や信用金庫などでは、手続きに時間がかかる場合もあります。

3. 注意点

銀行ごとの手続きの違いに注意しながら、スムーズに相続手続きを進めるためのポイントをいくつか紹介します。

(1) 事前確認

手続きを始める前に、各銀行の公式ウェブサイトや窓口で必要書類や手続きの詳細を確認しておくことが重要です。これにより、手続きの途中で書類が不足するなどのトラブルを防ぐことができます。

(2) 一括手続きの活用

複数の銀行に相続手続きを依頼する場合、一括手続きが可能なサービスを利用すると便利です。例えば、遺産整理業務を行っている専門家(司法書士や弁護士)に依頼することで、一度に複数の銀行の手続きを進めてもらうことができます。

(3) 書類の保管

相続手続きで使用する書類は、全てコピーを取って保管しておくことをお勧めします。書類の紛失や追加提出が必要になった場合に備え、原本と共に安全に保管しておきましょう。

(4) 手続きの期限

相続手続きには期限がある場合があります。例えば、相続税の申告期限は、故人が亡くなった日から10か月以内です。銀行の名義変更手続きも、できるだけ早めに行うことが望ましいです。

(5) 専門家の相談

相続手続きに不安がある場合は、専門家に相談することを検討しましょう。当事務所でも相続手続きに関する豊富な知識と経験を持っており、手続きをスムーズに進めるためのアドバイスを提供しております。