生きるための権利でもある生活保護。病気等のために働きたくても働くことができず、収入の道が閉ざされた方は生きるためにぜひ申請していただきたい制度です。
しかし、生活保護を受けることでデメリットが生じることも確かです。この記事では生活保護のメリットとデメリットについて解説しています。
ぜひ参考にしてみてください。まずはデメリットから。
生活保護の6つのデメリットとは?
生活保護を受けることによるデメリットはないのか?
これは生活保護を受けようとしている方にとって気になる点ではないでしょうか。
そこで実際に生活保護の申請を行っている私から見た「生活保護のデメリット」は6つありますのでご紹介します。このデメリットは、人によっては特にデメリットにはならないかもしれません。あくまでも一般的に、ということです。
すでに生活が別になっている親や兄弟などの親族に知られてしまう
生活保護を受けることをためらう原因の中で最も大きな壁になっているのはこの点ではないかと考えています。
生活保護を申請すると、福祉事務所(役所の保護課)では本人への援助が可能かどうかの確認のために「扶養照会(ふようしょうかい)」を行ないます。
なぜそういうことをするかと言いますと、生活保護費を支払うためにはその人には「頼れる家族や親戚がいない」ということが大前提になっているからです。
では、その「扶養照会」、誰に連絡が行くのでしょうか。
それは、家族(「直系血族(親・子)」および「兄弟姉妹」)および3親等の親戚です。それら近しい親族に現在の自分の状態を知られたくないという気持ちの強い方が多くいらっしゃいます。
中には、気持ちの問題のみならず、親族からDVや虐待を受けているという方もおり、そのような場合にはせっかくDVや虐待から逃れてきたのも関わらず居所を知られてしまうという最悪の事態に繋がってしまうケースもあります。
もちろんそのようなケースでは「扶養照会」を拒むこともできますが、そういった特別な事情がないケースではやはりこれは大きなデメリットになり得ると言えるでしょう。
住む場所が制限されてしまう
2つ目のデメリットは、「住む場所が制限される」という点です。
生活保護で扶助される費用の中に「住宅扶助」があります。この住宅扶助では家賃の上限が定められています(上限額は地域や家族構成によって異なります)。
それで、住み慣れた現在の家の家賃が住宅扶助の額を上回っている場合は、住宅扶助内で借りられる家に引っ越す必要が生じてきます(引っ越し費用は生活保護から支給されます)。
簡単に言うと「自身の収入に見合ったアパートや公営住宅などへの転居」をしてくださいね、ということです。
ですので、場合によっては住み慣れた家や希望する家とは異なる家に住まなければならないということもあり、それはデメリットになるでしょう。
ローンが組めない。クレジットカードを作れない。
ローンは明らかに借金ですので完全にNGです。もっとも生活保護を受けているということで審査に通らない可能性が高いです。
借金をすると、その分が保護費から差し引かれてしまいます。ざっくり言うと、10万円の借金をした場合、その分が保護費から差し引かれてしまいますし、最悪の場合、生活保護が打ち切られてしまうことになりかねません。
まれに生活保護であっても審査の甘いところで少額のローン(10万円程度)を受けることができてしまうことがあるのですが、それはやめたほうが良いです。
借金をすると、同額(場合によってはそれ以上)が保護費から差し引かれてしまうからです。
そうなるとどんなことになるか?
わかりやすくするために利息を考慮に入れずに計算してみますと、
10万円を借りたとします。その10万円を月々1万円ずつ返済していくとします(本来、保護費から借金の返済をしてはダメですが)。
返済し終えるまで10ヶ月かかりますよね(利息は考慮に入れずに計算しています)。
その10ヶ月間は、返済分以外に同額の1万円を保護費から差し引かれてしまう、ということです(あくまでもざっくりとした説明です)。つまり、借金をすることで余計に生活が苦しくなってしまうということなんです。
それだけではありません。前述の通り、最悪の場合には保護が打ち切られてしまうことになりかねません。
ですので、保護費の中でやりくりをする必要がある、ということです。
クレジットカードも、収入が生活保護だけですと審査を通らないケースが多いかと思いますが、キャッシングができないようにすれば審査が甘いところでは作れる場合もあります。
ケースワーカーに生活状況をチェックされる
福祉事務所(役所の保護課)のケースワーカーは生活保護受給者の生活を定期的にチェックすることになっています。
世帯の実態に応じて、福祉事務所のケースワーカーが年数回の訪問調査を行います。
〜厚生労働省ホームページより引用
厚労省のウェブサイトには上記の記載があり、年に数回の訪問を受けることになっています。その際、まだ働けない状況にあるのか、健康状態はどうなのか、部屋の中に高価な物がないかといったことをいろいろと聞かれます。
訪問調査は、もちろんそれだけではなく、生活保護受給者の中には高齢の一人暮らしの方もいますので困っていることがないか等を確認してサポートするという意味合いもあります。
たいていは面談日時を約束した上での訪問なのですが、まれに抜き打ち的に訪問する場合もあります。
そのようなケースワーカーによる生活状況のチェックをデメリットと感じる方も少なからずいらっしゃることでしょう。
持ち物を管理される
これは上記の「生活状況をチェックされる」という点と似ています。たとえば、スマホや携帯電話を2台持つことは「ぜいたく品」扱いとなる可能性があり、処分・売却するようにと言われてしまうこともあります。
スマホ本体の購入に関しては保護費の中から購入することに問題はありません。
他にも下記のものについてはどうしても制限されてしまいます。
- 貯蓄性の積立保険
- 貴金属や高級腕時計
- 自動車・バイク
もっとも、これらについては生活保護を申請する段階で確認され、所有しているなら「まずは売却してください」と指導されます(例外もあります)。
ですので、受給開始後にもこれらの加入や購入に関しても制限を受けるということです。
お金の使い方が制限される
この点は上記の「持ち物を管理される」という点とほぼ同じ趣旨です。
中には生活保護を受けながら競馬や競輪、パチンコなどをする方もいるかもしれません。実際に何に使ったかのチェックまではされませんし、チェックのしようがないのですが保護費を賭け事に使わないようにという指導はされます。
そのような指導を鬱陶しいと感じるかもしれません。
生活保護のメリットは?
では生活保護を受けることにはどんなメリットがあるのでしょうか。
人によっては上記のデメリットをはるかに上回るメリットがあります。
最低限の生活費を受け取ることができる
これが最も大きなメリットです。もともと家も自動車も所有しておらず借金もない、仕事もないという方にとっては最低限とはいえ決まった額の生活費を毎月受け取ることができるのは本当に心強いに違いありません。
その受取ることができる生活費によりお金の心配をせずに生きることができるのですから。
医療費が無料になる
これは持病があり定期的に病院に行かなければならない方にとっては大きなメリットです。特に高齢者にとっては医療費は本当に大きな負担になりますよね。
生活保護を受けることで健康保険証はなくなりますが、福祉事務所から医療機関に連絡をしてもらいますので医療費を支払う必要はなくなり、
「体調が悪いけどお金がないから病院に行けない」という心配をしなくて済みます。
生活保護の「医療扶助」が支給されます。これはお金による支給ではなく現物支給となり、窓口での支払の必要がありません。
医療扶助には下記のものが含まれています。
- 診察
- 薬剤又は治療材料
- 医学的処置手術及びその他の治療並びに施術
- 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
- 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
- 移送
その他、支払いが免除されるものがある
免除されるのは医療費だけではありません。
下記の支払いも免除されています。
- 所得税・住民税・固定資産税などの税金
- 国民年金保険料
- 国民健康保険料
- 介護保険料
- 介護サービス利用料
- NHK受信料
- 保育料
様々な支払いが免除されますので、「最低限の生活」とはいえ贅沢(ぜいたく)をしなければある程度の生活を送ることはできるのではないかと思います。
まとめ
以上、生活保護のデメリットとメリットをまとめてみました。
いくつものデメリットがあるとはいえ、困窮していて3度の食事さえままならないという方にとっては最後のセーフティネットとも言える生活保護。
その生活保護を受けることによって命をつなぐことができます。
今、本当に困窮しているのでしたら誰でも申請することができます。福祉事務所(役所の生活保護課)は申請を拒否することができません(申請が通るかどうかはまた別ですが)。
当事務所では、お金に困っている方が生活保護を受けることができるよう福祉事務所に同行して一緒に申請をしています。まずはお気軽にご相談ください。相談料は初回60分無料です。