「人工関節の手術を受けたら、身体障害者に認定されますか?」と尋ねられることがあります。
確かに10年程前(2014年3月)までは、股関節や膝関節の人工関節手術を受けると、例外なく身体障害者の等級4級が認定されていました。この認定により、交通費の助成や公共料金等の助成といった支援を受けることができました。
ところが、2014年4月に身体障害者福祉法が改正されたことによって、人工関節の手術を受けただけでは身体障害者手帳を取得することができなくなりました。
この記事では「人工関節の手術を受けたら、身体障害者に認定されるのか」という点についてもう少し掘り下げて説明してみたいと思います。ぜひ参考にしてみてください。
人工関節の手術を受けたら、身体障害者に認定されるのか
結論から申し上げますと、人工関節の手術を受けた場合、それだけで身体障害者に認定されることはありません。
2014年4月に身体障害者福祉法が改正され、それ以降、人工関節の手術だけでは身体障害者手帳の交付対象にはならなくなりました。認定されるかどうかは、手術後の機能障害の程度や日常生活への影響が基準に該当するかどうかによって判断されます。
具体的には、人工関節置換術後の障害の状態(関節可動域など)を詳細に評価し、術後の経過が安定した時点での関節の可動域などの状況に基づいて、4級・5級・7級または非該当のいずれかに判定されます。もっとも7級と認定された場合は、それだけでは障害者手帳は交付されませんので、実際には4級と5級のみとなります。
この可動域制限などの基準は非常に厳格に設定されています。昨今の人工関節置換術では術後の状態が良くなることが多いため、通常の人工関節手術後の患者が障害等級を認定されるケースはほとんどないと言って良いでしょう。
人工関節の手術後、身体障害者手帳を取得できる条件
では、実際にどのくらいの可動域だったら障害者認定されるのでしょうか。
以下のリンクは厚生労働省の平成26年(2014年)1月21日付で都道府県知事、指定都市市長、中核市市長宛に送付した文書です。
『「身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害者認定基準)について」の一部改正について』
その文書には改正点について次のように説明されています。改正後の認定基準を要約しますと下記の通りです。
肢体不自由
人工骨頭又は人工関節については、人工骨頭又は人工関節の置換術後の経過が安定した時点での機能障害の程度により判定する。いくつか例を挙げてみますと、次の通りとなります。
4級
【股関節・膝関節】
- 各方向の可動域(伸展←→屈曲、外転←→内転等連続した可動域)が10度以下のもの
- 徒手筋力テストで2以下のもの
- 高度の動揺関節、高度の変形
【肩関節】
- 関節可動域30度以下のもの
- 徒手筋力テストで2以下のもの
【肘関節】
- 関節可動域10度以下のもの
- 高度の動揺関節
- 徒手筋力テストで2以下のもの
5級
【股関節】
- 可動域が30度以下のもの
- 徒手筋力テストで3に相当するもの
【膝関節】
- 関節可動域30度以下のもの
- 徒手筋力テストで3に相当するもの
- 中程度の動揺関節
【足関節】
- 関節可動域5度以内のもの
- 徒手筋力テストで2以下のもの
- 高度の動揺関節、高度の変形
【肩関節】
- 関節可動域60度以下のもの
- 徒手筋力テストで3に相当するもの
【肘関節】
- 関節可動域30度以下のもの
- 中程度の動揺関節
- 徒手筋力テストで3に相当するもの
- 前腕の回内及び回外運動が可動域10度以下のもの
まとめ
このように、人工股関節や人工関節の置換術を受けたというだけでは、以前のように障害者等級の認定はなされないということです。繰り返しになりますが、あくまでも手術後の機能障害の程度や日常生活への影響が基準に該当するかどうかによって判断されるということです。